赤絵と青絵 ――馬場あき子歌集『あかゑあをゑ』書評 「歌壇」に連載した「あかゑあをゑ」を中心に、東日本大震災までの歌を収めた著者第二十四歌集。 二千トンの橋梁開く中軸にヤジロベヱといふ原理をりたり ルミナリエ蒼い孤独を味はひにゆく夜となるたましひうすく 勝鬨橋や神戸のルミ… もっと見る
なかったけれどあった歌 ――あまねそう歌集『2月31日の空』評 ミニチュア模型を眺めるのが好きな人は多いだろう。最近では食品玩具として模型店でなくても購入することができる。昭和の商店街や、キッチンセットなど幅広いシリーズが販売されているが、眺めているときに共通して浮かぶ感情は、〈郷愁… もっと見る
限りある生への意識をめぐって ――渡辺松男小論 渡辺松男の既刊七歌集を振り返ると、人生の短さを詠んだ歌が散見される。 棒切れかなにかのごとき一生も棒切れに長さありてわれ泣く 『歩く仏像』 こごみ見るありあけすみれ一生はたまはりものにしてもみじかし 『蝶』 本稿… もっと見る
無所属を生きるということ 大学卒業前に魚村晋太郎さんとお酒をご一緒したことがある。憧れの人に会えた興奮と酔いとで、私は饒舌にも「何かの賞を獲るまで結社や同人誌には入りたくない」と話した。氏は優しく、だがきっぱりと「その考え方はとても格好悪いよ」と… もっと見る
俵万智『短歌のレシピ』評 本書は季刊『考える人』(新潮社)に連載されていた「考える短歌」をまとめたもので、『考える短歌―作る手ほどき、読む技術』(二〇〇四年・新潮社)の続編にあたる。 前書は秀歌の鑑賞と投稿歌の添削がセットになっていたが、前書きに… もっと見る
寺山修司とわたし 間引かれしゆゑに一生欠席する学校地獄のおとうとの椅子 『田園に死す』 俳句、短歌、演劇と駆け抜けた寺山修司を〈永遠の転校生〉のように感じてきた。「短歌ってのは回帰的な自己肯定性が鼻についてくる」という言葉には、短歌から… もっと見る