境界の表面張力 ――ながや宏高作品批評

「水性ファンタジー」は、水に関する歌で揃えた〈水しばり〉の一連である。同様の試み自体はよくあるが、なかなか成功は難しい。例えばスポーツで考えてみると、フットボールを初めて見た人は、その面白さよりも何故〈足しばり〉なのかば…

未刊の事典、砂の事典 ――歌壇時評2015年3月

本誌1月号に大野道夫が「結社の記念事業力――『塔事典』を例として」を寄せている。昨年六〇周年を迎えた塔短歌会発行の『塔事典』を分析することで、結社における「記念」とは何であるかを問う好文であり、あらためて「記」と「念」の…

客席のない舞台 ――石川美南の空想力

わたしなら必ず書いた、芳一よおまへの耳にぴつたりの話  『離れ島』 石川美南から一首を引くのは難しい。例えば『裏島』から「異界より取り寄せたきは氷いちご氷いかづち氷よいづこ」を引くとする。あまりの暑さに天変を呼ぶほどかき…