境界の表面張力 ――ながや宏高作品批評 「水性ファンタジー」は、水に関する歌で揃えた〈水しばり〉の一連である。同様の試み自体はよくあるが、なかなか成功は難しい。例えばスポーツで考えてみると、フットボールを初めて見た人は、その面白さよりも何故〈足しばり〉なのかば… もっと見る
ざぶとんを運ぶ時間、あとがきのあとの時間 ――歌壇時評2015年4月 東京新聞の短歌月評(1月17日夕刊)にて山田航は「大喜利的現代短歌というか、平成狂歌とでも呼べる作風が昨今とみに目立ってきている」と指摘する。例として書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズより歌集を刊行した岡野大嗣・木下龍也・伊舎… もっと見る
未刊の事典、砂の事典 ――歌壇時評2015年3月 本誌1月号に大野道夫が「結社の記念事業力――『塔事典』を例として」を寄せている。昨年六〇周年を迎えた塔短歌会発行の『塔事典』を分析することで、結社における「記念」とは何であるかを問う好文であり、あらためて「記」と「念」の… もっと見る
不実、複数参加、ふたつの通貨 ――歌壇時評2015年2月 「震災から三年になる今年、消費税率の引き上げも影響しているのでしょうか、刊行物の総量も前年より大幅に減少しているようです。」 「短歌研究」二〇一四年12月号の堀山和子編集長による編集後記より引いた。この一節が気になったの… もっと見る
客席のない舞台 ――石川美南の空想力 わたしなら必ず書いた、芳一よおまへの耳にぴつたりの話 『離れ島』 石川美南から一首を引くのは難しい。例えば『裏島』から「異界より取り寄せたきは氷いちご氷いかづち氷よいづこ」を引くとする。あまりの暑さに天変を呼ぶほどかき… もっと見る
「力」という一字の行方 ――『菱川善夫歌集』を読む 怪・神・乱孔子はとかず而もなほ論語一巻の価値動くなし 菱川善夫の公演記録集『素手でつかむ火』を手にしたのは学生時代だった。時代と斬り結ぶことから逃げる歌を、菱川は容赦なく斬ったが、その宝刀として塚本邦雄の歌を抜くさまには… もっと見る