ネットにおける〈場〉の成長率――特集:平成短歌の考察

ネットと短歌の関係を数値化することは難しい。本稿では、十年ほど大きな変化のない京大短歌会のウェブサイトへの訪問者数動向をもって、ネットにおける学生短歌会ひいては短歌全般の盛り上がりの傍証としたい。サイトへの毎月の訪問者数はこの十年でおよそ倍になっており、総務省が発表するネットの人口普及率の成長を大きく上回る。この五年はスマートフォンがネットと短歌を繫ぐ鍵だ。斉藤斎藤関連の突発的な訪問増も、川北天華の短歌「問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい」の波状的な広がりもネットの特性だろう。時間的に古いページが突然/繰り返し注目された点に注目したい。世の中で話題になることが目的ではないが、検索と共有で成り立つネット上に、些細なことでも継続して記録することの意味は大きい。

 

初出:角川「短歌」 2017年5月号
特集:平成短歌の考察 コラム <数字で見る「場」の変化>