生業と死別 ――河野美砂子『ゼクエンツ』歌集評 二〇〇四年から二〇一〇年に発表された歌を収めた著者第二歌集。 世に仕事詠や職場詠は多いが、河野作品に刻まれる歌は〈生業詠〉と呼びたくなる。 企画書に予算書も添付提出すモーツァルトを弾くための金額 労働の対価としての金額が… もっと見る
骨格を問う ――特集:短歌賞を考える 四年ほど前、座談会収録のために本郷にあった角川ビルを訪れた。収録には「短歌」編集長を退かれてまもない杉岡中氏も同席された。収録の合間に、私はほんの興味で、角川では短歌評論の新人賞は用意されないのか、ということを聞いてみた… もっと見る
雨と徹底的な外部 ――特集:雨の歌 雨、うすきテントを叩く外部とは徹底的に外部であった 中澤系『uta0001.txt』 硬貨の絵柄は海の生物 雨がシングルクリックとなるまでを待つ5クローネ(銀のイルカ)を指で跳ねあげ 光森裕樹『鈴を産むひばり』 雨の… もっと見る
磁石と暮らす ――特集:連作を極める 角川短歌賞には三度応募した。予選通過・次席・受賞と一段ずつにじり寄った形と言えるが、寡作であるため数年おきの応募だった。結果を確認するたびに退路を断たれるような気分になったけれど、以降も歌集をまとめる際など、何をしても同… もっと見る
中畑智江『同じ白さで雪は降りくる』歌集評 しろがねの機体の待機しておれば北海道とはやはり遠いな 帯広に行く場面を詠んだ歌であるが、「遠いな」と、「な」で終わっていることに驚く。例えば「遠いね」という、語りかける対象を(時には過剰に)意識した口調は案外短歌に多いが… もっと見る
あなたが私をのっとる前に ――リレー小論:今、私が表現したいもの こんな遊びがある。 ある人物名が書かれた紙を額に貼る。その人物名は周りの人には分かるが、貼られた本人には読むことができないので、分からない。そこで「はい」か「いいえ」で答えられる質問を積み重ねて推理を深め、その人物名を当… もっと見る