パズルとサイコロと

ひかりほどのおもさをうけてちるはなのはなのひとつのまだちらぬとき 渡辺松男『雨(ふ)る』 光子は質量を持たず、波動と粒子の性格を併せ持ち――というあたりから物理化学の授業についていけなくなった。文学部を目指していた私が「…

佐佐木幸綱の一首

俺は帰るぞ俺の明日(あした)へ 黄金の疲れに眠る友よおやすみ 佐佐木幸綱『夏の鏡』 歌集の読み方は人それぞれだが、若輩でなければできない読み方がひとつある。先行者たるベテラン歌人が、自身と同じ年頃にどのような歌集を残した…

高柳蕗子『短歌の酵母』書評

「鹿首」発表の論に手を加えるかたちで構成された評論集。既刊評論集の中では『短歌の生命反応』(北冬舎・二〇〇二年)に接続する一冊と言える。 短歌を巨大で長命な「生命みたいなもの」と捉え、「人という酵母菌たちに短歌を詠ませて…