焦点距離を越えて ――磯江毅と柚木圭也

現代における写生について考えるにあたり、原点に立ち返ってみたい。正岡子規は文芸における「写実主義」と、絵画における「写生」から、短詩型に「写生」という言葉を持ち込んだ。子規は「写実」と「写生」を同じものとして扱っていたた…

歌による指名手配

私が京大短歌会の扉を叩いたのは大学五年生になってからであった。ただ、大学構内に貼られた新人募集のビラは、毎年のように、こっそりと一枚剥がしてコレクションにしていた。 ビラに書かれた歌の多くは会員の歌であり、どれも魅力的だ…

読めない手紙

60年安保改定の激動の年に21歳で自死した福崎町出身の歌人岸上大作(1939―60年)が亡くなる2年前に、思いを寄せた女性に送った絵はがきが見つかった。クリスマスイブに切ない恋心をつづったラブレターだ。(中略)緑のインク…

現代歌人協会賞受賞のことば

第五十五回目の現代歌人協会賞に『鈴を産むひばり』が選ばれたことを、大変うれしく思います。選考委員の方々、ならびに、歌集の出版にご協力くださった方々に厚く御礼申し上げます。 短歌に関わるようになって十年以上が経ちますが、学…

格子の中から

月に三十円もあれば、田舎(ゐなか)にては楽に暮らせると―― ひよつと思へる。       石川啄木『悲しき玩具』 啄木が二十四、二十五歳ぐらいの頃の歌になるだろうか。実に一世紀ほど前の近代短歌であるが、今いる場所を離れた…