岡本かの子の構成意識 岡本かの子の第一歌集『かろきねたみ』が大正元(一九一二)年末に上梓されてから、はや一世紀が過ぎた。 第二次世界大戦が始まった昭和十四(一九三九)年に四十九歳の若さで他界したかの子には、歌以外にも仏教研究や小説においての膨… もっと見る
飛ぶほかになく ――内山晶太歌集『窓、その他』評 今年は「待望の」と呼ばれる若手の第一歌集が数多く出た。内山晶太の『窓、その他』もその一冊であるだろう。だが、この歌集を満たす寂しさを、誰が待望し切れた(・・・・・・)だろうか。 本歌集には、若くして短歌現代新人賞を受賞し… もっと見る
ドイツの珈琲 うるほへる瞳のごとき珈琲で事足る日々をただひとりゐる 『鈴を産むひばり』 七年にも及ぶ大学生生活の長い空腹を、珈琲でごまかしながら過ごした。煎った豆をお菓子として齧ったりもしたが、珈琲それ自体を食べるように飲んでいた。自… もっと見る
歌人のパレット 先日、ドラクロア、ゴーギャン、ゴッホらが使用していたパレットを写真で見た。様々な色をパレットに並べていた画家もいれば、少ない色でやりくりしていた画家もいて、実際の絵画作品と比べてみたりした。 語彙を絵の具として、歌の世界… もっと見る
「小島なお」ひとりについて 噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし 春風のなかの鳩らが呟けりサリンジャーは死んでしまった 二冊の歌集、『乱反射』(2007年)・『サリンジャーは死んでしまった』(2011年)から、歌集の題に採られた歌を引いた… もっと見る
実体と名称との隙間 ――今野寿美歌集『かへり水』評 『かへり水』は日常を中心に、競走馬への想い、春日井建のへ挽歌、ハワイでの滞在など、多岐に取材した第八歌集である。言葉に対する鋭敏な感覚を心地良い韻律にのせるのが、今野作品の特徴であるが、その点についてはこれまでの歌集評に… もっと見る