パズルとサイコロと ひかりほどのおもさをうけてちるはなのはなのひとつのまだちらぬとき 渡辺松男『雨(ふ)る』 光子は質量を持たず、波動と粒子の性格を併せ持ち――というあたりから物理化学の授業についていけなくなった。文学部を目指していた私が「… もっと見る
横へ横へと ――黒瀬珂瀾『蓮喰ひ人の日記』歌集評 アイルランドと英国滞在の13ヶ月を歌日記として綴る著者第三歌集。 そも吾はいかなる船か壱萬粁(キロ)飛びきて語る夜のザブングル 英国での一首。省略した詞書(以降同様)には「日本人オタクのオフ会」に参加したとある。往年の戦… もっと見る
佐佐木幸綱の一首 俺は帰るぞ俺の明日(あした)へ 黄金の疲れに眠る友よおやすみ 佐佐木幸綱『夏の鏡』 歌集の読み方は人それぞれだが、若輩でなければできない読み方がひとつある。先行者たるベテラン歌人が、自身と同じ年頃にどのような歌集を残した… もっと見る
高柳蕗子『短歌の酵母』書評 「鹿首」発表の論に手を加えるかたちで構成された評論集。既刊評論集の中では『短歌の生命反応』(北冬舎・二〇〇二年)に接続する一冊と言える。 短歌を巨大で長命な「生命みたいなもの」と捉え、「人という酵母菌たちに短歌を詠ませて… もっと見る
清潔で自然な優しさ ――川本千栄『樹雨降る』歌集評 四十代後半からの六年間を収めた第三歌集。師の喪失と震災、摘出手術の経験と子の成長など、公私にわたる大きな出来事が真正面から詠まれている。この姿勢は、既刊歌集含めて一貫したものだ。 永田和宏の泣くのを聞かずわが内の河野裕子… もっと見る
生業と死別 ――河野美砂子『ゼクエンツ』歌集評 二〇〇四年から二〇一〇年に発表された歌を収めた著者第二歌集。 世に仕事詠や職場詠は多いが、河野作品に刻まれる歌は〈生業詠〉と呼びたくなる。 企画書に予算書も添付提出すモーツァルトを弾くための金額 労働の対価としての金額が… もっと見る