砂子屋書房 日々のクオリア(2017.10.16〜12.29)

  

砂子屋書房の一首鑑賞コーナー「日々のクオリア」10月16日から12月29日(最終回)までの掲載分です。一年間なんとか無事に続けてこられてほっとしています。

それぞれ、歌の前の番号をクリックすると該当するページが表示されます。

検索窓と生きる

  • (3) 一九八四年九月六日蒲田女子高裏窓の少女たち  真中朋久

その他

  • (1) 最上階のラウンジからの東京を宝石箱と呼んでいた頃  田中章義
  • (2) 「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が揺さぶる  堀合昇平
  • (3) こうやって母もぼんやり眺めてたやかんの湯気が激しく沸つを  前田康子
  • (4) <先に行く PM3:00> かかわりのない伝言の前を過ぎてく  早坂類
  • (5) ベランダの手摺りに砂の残りいる会わぬと決めし人の掌のごと  梅内美華子
  • (6) 夜のでんしやに「もうだめだな」といふ人あり雨の言葉のやうに沁みくる  馬場あき子
  • (7) 嘘ではない、嘘ではないがどこまでも滑らかである彼の言葉は  ひぐらしひなつ
  • (8) 観賞用金魚百匹と日を送る 観られているのは吾かもしれず  岡しのぶ
  • (9) 恋愛が恥ずかしかった夏 海を見るためだけに海に出かけた  千葉聡
  • (10) この空に数かぎりない星がありその星ごとにまた空がある  沢田英史
  • (11) 歩きつつ本を読む癖 電柱にやさしく避けられながら街ゆく  柳澤美晴
  • (12) 香りさえ想像されることはなくりんごはxみかんはyに  伴風花
  • (13) 新潟のさといもぬめるしっかりとここで暮らして雪を見なさい  本田瑞穂
  • (14) お酒呑みません煙草吸いません運動しません すみません  青沼ひろ子
  • (15) 猫の腹に移りし金魚けんらんと透視されつつ夕日の刻を  杉﨑恒夫
  • (16) 農機具のレバーを握る夜の夢しょうがねぇなァ田園を刈る  中山俊一
  • (17) 掃除機は仰向けのままひかれをり「ずぼらやなあ」と叱られながら  池田はるみ
  • (18) 厨辺にぽとりぽとりと水おちてうつぶせのごとく冬に入るなり  小高賢
  • (19) 島檸檬島唐辛子島豆腐そうなんだよな島なんだよな  池田行謙
  • (20) とぎ水を捨てつつ思ふこの島に取り残さるるごときうつし身  森山良太
  • (21) 沖縄は地球(テラ)に抱かるる守宮かもまるくゆらりと(まみ)をめぐらす  名嘉真恵美子
  • (22) もう会はぬ従兄弟のやうなとほさかな みなとみらいとニライカナイは  本多真弓
  • (23) 酔ひ深き夫がそこのみ繰り返す沖縄を返せ沖縄を返せ  佐藤モニカ
  • (24) やや飽きし旅の窓辺においておくみづのかたちはひかりのかたち  西之原一貴
  • (25) ここしかない、そういう風でなくていい 春の柳が風にふくらむ  中津昌子
  • (26) もみの木はきれいな棺になるということ 電飾を君と見に行く  大森静佳
  • (27) 東京を捨ててIT捨てざりき言の葉しるき光森裕樹  坂井修一
  • (28) 五十年まったき闇を知らざりき停電の夜も眠れるときも  今井恵子