砂子屋書房の一首鑑賞コーナー「日々のクオリア」10月16日から12月29日(最終回)までの掲載分です。一年間なんとか無事に続けてこられてほっとしています。
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検索窓と生きる
- (3) 一九八四年九月六日蒲田女子高裏窓の少女たち 真中朋久
その他
- (1) 最上階のラウンジからの東京を宝石箱と呼んでいた頃 田中章義
- (2) 「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が揺さぶる 堀合昇平
- (3) こうやって母もぼんやり眺めてたやかんの湯気が激しく沸つを 前田康子
- (4) <先に行く PM3:00> かかわりのない伝言の前を過ぎてく 早坂類
- (5) ベランダの手摺りに砂の残りいる会わぬと決めし人の掌のごと 梅内美華子
- (6) 夜のでんしやに「もうだめだな」といふ人あり雨の言葉のやうに沁みくる 馬場あき子
- (7) 嘘ではない、嘘ではないがどこまでも滑らかである彼の言葉は ひぐらしひなつ
- (8) 観賞用金魚百匹と日を送る 観られているのは吾かもしれず 岡しのぶ
- (9) 恋愛が恥ずかしかった夏 海を見るためだけに海に出かけた 千葉聡
- (10) この空に数かぎりない星がありその星ごとにまた空がある 沢田英史
- (11) 歩きつつ本を読む癖 電柱にやさしく避けられながら街ゆく 柳澤美晴
- (12) 香りさえ想像されることはなくりんごはxみかんはyに 伴風花
- (13) 新潟のさといもぬめるしっかりとここで暮らして雪を見なさい 本田瑞穂
- (14) お酒呑みません煙草吸いません運動しません すみません 青沼ひろ子
- (15) 猫の腹に移りし金魚けんらんと透視されつつ夕日の刻を 杉﨑恒夫
- (16) 農機具のレバーを握る夜の夢しょうがねぇなァ田園を刈る 中山俊一
- (17) 掃除機は仰向けのままひかれをり「ずぼらやなあ」と叱られながら 池田はるみ
- (18) 厨辺にぽとりぽとりと水おちてうつぶせのごとく冬に入るなり 小高賢
- (19) 島檸檬島唐辛子島豆腐そうなんだよな島なんだよな 池田行謙
- (20) とぎ水を捨てつつ思ふこの島に取り残さるるごときうつし身 森山良太
- (21) 沖縄は地球に抱かるる守宮かもまるくゆらりと目をめぐらす 名嘉真恵美子
- (22) もう会はぬ従兄弟のやうなとほさかな みなとみらいとニライカナイは 本多真弓
- (23) 酔ひ深き夫がそこのみ繰り返す沖縄を返せ沖縄を返せ 佐藤モニカ
- (24) やや飽きし旅の窓辺においておくみづのかたちはひかりのかたち 西之原一貴
- (25) ここしかない、そういう風でなくていい 春の柳が風にふくらむ 中津昌子
- (26) もみの木はきれいな棺になるということ 電飾を君と見に行く 大森静佳
- (27) 東京を捨ててIT捨てざりき言の葉しるき光森裕樹 坂井修一
- (28) 五十年まったき闇を知らざりき停電の夜も眠れるときも 今井恵子