砂子屋書房の一首鑑賞コーナー「日々のクオリア」8月16日から12月6日までに掲載されたもののうち、学生短歌会の歌をとりあげたものを以下の通りまとめておきます。
それぞれ、歌の前の番号をクリックすると該当するページが表示されます。
学生短歌会の歌
- (1) 朝顔は咲かなかったし約束も守れなかった ブローチを刺す 中野愛菜
- (2) 底辺を高さと掛けて二で割ったことを私は必ず許さない 駒田隼也
- (3) うまく言えたためしがないなそのままのあなたにもわたしにも吹く風 中山文花
- (4) 薄暗い頃に目覚めてジャスミンの香りに喉をしめらせてゆく 轟車自転車
- (5) バス停はもう水浸し来ないなら来なくてもいいから待っている 坂本歩実
- (6) 年末の十億円が当たったら/当たらなくてもバイトは辞める パンダの赤ちゃん
- (7) でもそれでいいんだとてもみぞれ降る二月のことを聞かせてほしい 岐阜亮司
- (8) 中学生のカップルねむるシアターが映し出すマイケル・J・フォックス 西村優紀
- (9) きみの持つ釣りざお見ながらゆく港 寒い そうだね噓みたいだね ね 初谷むい
- (10) 初雪が降ったみたいに顔を上げおそらく震度3のファミレス 神谷俊太郎
- (11) 獏たちが来たときに差し出す夜を祈りと思い出に分けておく 永山源
- (12) 逝きかけの蟬を励ますこの夏にとくに未練はないはずなのに 北島洋
- (13) そういえばもう長いこと空(青いやつです)色の空を見ていない ももも
- (14) 救命の練習用の人形に雑にあけられている耳穴 安錠ほとり
- (15) 誤って世界から離脱しないようわずかな尿意を残して眠る 西改美希
- (16) アトラクション終わるみたいに叡電が出町柳のホームに参ります 高橋由香里
- (17) 昔からあった感じの葬儀屋の戸前にドライ・アイス・ボックス 田島千捺
- (18) ひとしきり思いを馳せる 自販機のしくみに まだ見ぬきみの新居に 安田茜
- (19) なめらかなわたしの腕を撫でる手がわたし以外にあるべき、九月 小原みさき
- (20) 林檎ほどの火にてポットを温めつきみの聴けざるきみの寝言よ 瑞田卓翔
- (21) いましねばこれが遺影に使われる瞳にひかりがひしめくプリクラ 坂本七海
- (22) 真夜中の電話口にて君に言う「死にたい」以外は全部嘘です 渡延悠里
- (23) みなと風 吊り広告を取り替えるひとの眼鏡に虹は映れり 西藤定
- (24) 先生が指さすものをドイツ語で、いす、りんご、カーテン、これは、風 吉田瑞季
- (25) さようなら昼のアイロンこの家はもっと軽くていいはずだから 常楽みちる
- (26) 巻末の旅のひとことウイグル語「ありがとう」を指し注文終えぬ 櫻井毬子
- (27) 地震やらサリンがばら撒かれたときになんで俺らは産まれたのだろう 久納美輝
- (28) 9割はブドウ糖だと聞いたからラムネのように薬をたべた 栞撫
- (29) あら汁の(なんの魚かわからないけどていねいに食べている)あら 櫛田有希
- (30) メロンパンの袋をあける いつもとは違うあけ方でとても綺麗に 二三川練