● 短歌について話すことが多かった
昨年以上に、人前でお話する機会に恵まれた一年でした。
- 連載企画「おもしろきこともなき世をおもしろく」第三回目 インタビュー記事 (東京新聞 2013-1-4)
- ラジオNIKKEI 坪田一男の『大人のラヂオ』文化教養コーナー(2013-3-2)
- 詩歌梁山泊第3回シンポジウム「詩歌トライアスロン」:パネリスト (2013-4-14)
- 現代歌人協会公開講座 現代短歌 何をどう歌う2 第3回「私を歌う」(2013-6-19)
- 第35回かりん全国大会公開講座「若手作品の現在」(2013-7-27)
- 新鋭短歌シリーズ出版記念会 トーク・セッション第一部 歌集を出すかもしれないあなたへ(2013-11-30)
年初の東京新聞でのインタビュー記事、大人のラヂオ、では、自身のこれまでの活動を振り返るいい機会となりました。
万事がそうだと言えば、元も子もないのかもしれませんが、”なぜ短歌なのか”という問いには、気付けば短歌だったというしかなく、とても回答しづらいものだと思っています。
○○を選んだ、あるいは、○○に選ばれた、という物言いは聞き手にとても心地よく響くものだと思います。話す側としても、自身の足元を踏み固めるような高揚があるのかもしれません。そう言いたくなる物事には、何か長い影のようなものを引きずっている感覚があります。問われるべきは、なぜ○○であることを確認したくなるのか、ということだと思っています。
詩歌梁山泊のシンポジウムに参加し、様々な詩型や、詩型をまたがった作品を多く読む中で、その思いを強くしました。
異なる世代で意見を交わした「現代歌人協会公開講座」、同じ世代で意見を交わした「かりん全国大会」も自身の視野を広げ、異なる角度から短歌を見つめるきっかけになりました。また、短歌を包む短歌の世界全体について考える機会として、「新鋭短歌シリーズ出版記念会」も参加することができたことも思い出深いです。
文章を書くことと比べると、どうも話すという行為にはのちのちに残らないのではないか、という不安がつきまといます。その場限りの盛り上がりだけで、一切が流れていってしまうような感覚は、誰のあたまにもよぎるものだと思っています。
いつか振り返った時に、”ああ、あの会がきっかけだったね”と呼べるようなものにどうすればできるのか。私達がイベントや会の後にどう行動していくかは、とても大切なことだと思います。どんなイベントや会にも、宿題はつきものですから。
● 作歌ペースの増加
2012年の反省として、作歌ペースの減少があったこともあり、今年はかなり多くの歌を詠みました。数えると、およそ160首ぐらいですので、短歌を始めてから一番多かったと思います。
「GANYMEDE 59号」への参加や、リトルプレスの発行などがその要因です。結社や同人誌に所属していないと、作品発表の場は限られてしまいます。狩りに出るような気持ちで機会を獲得する気持ちが大切だと感じました。
石垣島へ引っ越しをしたことなど、私個人をとりまく生活環境も大きく変わってきていますので、来年も頑張って歌を詠みたいと思います。
● 2014年にしたいこと
個人的に興味があって、短歌に関する組織の数、歌集・歌書の出版数を調べて発表してきましたが、次はどうあるべきかを考えて、具体的な行動にうつしていく必要を感じています。その視点から、以下の二つについて2014年の内に少しでもいいので何かをできれば、と思っています。
・より多くの短歌評論が書かれるための環境づくり
歌の内容や発表方法が多様化する中で、世代間・同時代間の縦横両方向でこまなか寸断が発生しているように思います。すぐれた一篇の評論が、その断絶を繋ぐ骨となり、ある一群の短歌をひとつの立ち姿としてかたちあるものにすることを夢見つつ、まずは、なぜ毎年のように”評論は不作と言われるのか”と考え、書き手にとってほんの少しでも役立つような環境づくりをしていきたいと思います。
・より多くの人が短歌に触れるためのきっかけづくり
好きな歌の一首ぐらい、誰もが持っていていいんじゃないか、ということをよく思います。人に好きな歌を教えてもらう、なんてとてもどきどきする素敵なことですよね。どうすれば、そういう世の中に近づくのでしょうか。どうすれば、短歌に触れる人が増えるのでしょうか。
歌集・歌書の贈答文化については賛否の意見がありますが、私自身は贈答数の問題ではなく、発行部数の問題だと感じています。例えば、歌集を出した時に200部を贈答するとして、それが多いのか少ないのかは、何部を世に送り出すのかとの比較で決まるはずです。究極的には、短歌に興味を持つ人が増やす以外に、出版・販売事情を変えていける方法はないと感じています。
――歌集が売れない、歌集は売りにくい。その声や現実のサンプリングはもう今年十分しましたよね。その”次”は何なのかを考えて、手探りをしながら行動していければと思います。
2014年がよりよい一年でありますように。