砂子屋書房の一首鑑賞コーナー「日々のクオリア」5月3日から5月31日までの掲載分です。各月の名称と空模様が詠まれた歌を集めてみました。5月の歌に始まり、5月末日に6月の歌を掲載して翌日から6月…ということがしてみたく、月を遡る変則的な並びになりました。
それぞれ、歌の前の番号をクリックすると該当するページが表示されます。
月と空
- (5月) 五月の樹をゆるがせて風来たるのち芯までわれを濡らす雨あれ 横山未来子
- (4月) 捨て猫の瞳の底に銀の砂 四月の雨はふいに降りやむ 山崎郁子
- (3月) しみじみと三月の空ははれあがりもしもし山崎方代ですが 山崎方代
- (2月) 約束をつんと破ってみたくなる二月の空にもりあがる月 干場しおり
- (1月) あおあおと一月の空澄めるとき幻の凧なか空に浮く 岡部桂一郎
- (13月) 舞い上がるぺらぺらな紙このままで十三月の空に舞いたし 吉田千枝子
- (12月) 灰色の空見上げればゆらゆらと死んだ眼に似た十二月の雪 鳥居
- (11月) 水薬の表面張力ゆれやまず空に電線鳴る十一月 穂村弘
- (10月) 十月の孟宗竹よそうですか空はそんなに冷えていますか 佐藤弓生
- (9月) 天からのサインが風に溶けてゐて諦めよといふ九月の朝に 新井蜜
- (8月) 波とほく寄する耳鳴り 八月の雲が厚みを増してゆくとき 目黒哲朗
- (7月) すずやかな空の青さで顔を洗う心地のあした七月となる 五十嵐きよみ
- (6月) ヴェランダは散らかっていて六月の台風がもうじきやってくる 土岐友浩